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乙嫁語り 8
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あらすじ
アミルの友人パリヤにとって、目下のところ気になるのは結婚相手。率直すぎる性格が災いしてか、なかなか縁談がまとまらない日々。そんなパリヤにも最近、気になる相手ができたようで……。第5の乙嫁(おとよめ)は人気の高いパリヤさんの物語! 果たしてパリヤは結婚できるのか!? 暗黒期から抜け出せるのか!? 悠久の大地・中央アジアを舞台に描くブライド・ストーリー『乙嫁語り』、抱腹絶倒の第8巻!
Wikipediaの情報
『乙嫁語り』(おとよめがたり、The Bride's Stories)は、森薫による日本の漫画作品であり長編第2作目の作品である。エンターブレイン発行の隔月誌『Fellows!』volume1(2008年10月発売)より連載を開始し、同誌が年10回刊『ハルタ』へと誌名変更されてからもvolume80まで基本的に毎号連載されていた。同誌の看板作品となっていた。2021年4月20日に創刊された『青騎士』(KADOKAWA)にNr.2Bより移籍して連載されている。『Fellows!(Q)』(エンターブレイン)全3号にも番外編が掲載されている。 19世紀後半 の中央アジア、カスピ海周辺の地域を舞台に、「乙嫁」をキーワードに、厳しい自然の中に生きる人々の生活と文化、時に人間の愚行を織り交ぜた物語を緻密で丁寧な画で描く。乙嫁とは、「弟の嫁」「年少の嫁」、また一説に「かわいい嫁」を意味する古語であるが、出版元であるエンターブレインのサイトでは同作における「乙嫁」を「美しいお嫁さん」の意であると記している。 2021年8月より森の肉筆を再現したワイド版が刊行されている。
あらすじ
カルルクとアミル 19世紀後半の中央アジア。街に定住するエイホン家の跡継ぎであるカルルクのもとに、北方の移牧民(半定住・半遊牧民)ハルガル家から20歳の花嫁・アミルが嫁いできた。彼女を迎える花婿・カルルクはまだ12歳。それでも二人は互いを大切にし、少しずつ夫婦の絆を深めていく。 ハルガル一族らの住む北方は、ロシアの侵攻(南下政策)で緊張状態にあった。ハルガルは有力部族のヌマジに娘を嫁がせることで縁をつなぎ、牧草地の共有権を得ることで命脈を保っていたが、乱暴に扱われた娘たちが次々に若死にするため、共有権を失うという危機に立たされていた。そこでアミルの叔父たちは、すでに嫁に出したアミルを連れ戻して嫁がせようと考え、アミルの兄アゼルと従兄弟たちをエイホン家に向かわせる。 身勝手な要求に驚き、拒絶するエイホン家の人々を無視し、アゼルらは強引な行動に出るが、バルキルシュの一喝に追い払われた。一方、どうしてもアミルを連れ戻したい叔父たちは、アゼルらを叱責し、自ら乗り込んでくる。 この狼藉に対し、エイホン家はハルガル家に縁切りを宣告、ついに両家は決定的な対立を見ることになった。ハルガル家は街に攻め入ってアミルを奪おうとするが、町ぐるみの抵抗に遭う。混乱のなか、カルルクは短剣を抜き、夫として命がけで妻アミルを守りぬいた。 争いは街の勝利に終わり、ハルガル家は捕虜を出し、処罰を与えられた。実家を失ったアミルを周囲は心配するが、その悲しみの一方で、アミルはカルルクに対し、今までとは違う形の愛情を抱き始めていた。バルキルシュはその様子を「嫁心づいた」と評した。 スミスと未亡人タラス 事態もひとまず落ち着き、スミスは友人に会うため、親しんだエイホン家の人々に別れを告げアンカラへと向かう。ところが次の街、カラザで落ち合うはずの案内人と出会えず、訪ね歩いた隙に荷物ごと馬を盗まれてしまった。そこへ同じように馬を盗まれた美しい婦人・タラスが現れる。彼女は未亡人で、馬は亡き夫の大切な遺産だった。幸いにも市の支配人の尽力により二人の馬は取り戻され、この事件をきっかけにタラスから家に招待されるスミス。 数日を一緒に過ごすうちに、スミスとタラスはそれぞれに相手に惹かれるようになっていく。しかしスミスの存在を邪魔に思ったタラスの義叔父の密告により、スミスは諜報員の疑いをかけられ、拘留されてしまう。ようやく会えた案内人、アリの機転で釈放されたスミスは、タラスと互いの愛情を確認しあい、金無垢の懐中時計を結納金として手渡し、婚約を取り交わした。 一方、タラスの姑は、義叔父は家事をさせる女手が欲しいだけであり、タラスを息子の後妻にし、召使い代わりにこき使うつもりでいると考え、自分が義叔父と結婚することで身代りになろうとしていた。結果的にそれぞれの行動は行き違ってしまう。今やタラスにとって義父となり、家長となった元の義叔父によって婚約は無効とされ、タラスはそのまま天幕の奥に姿を消し、結納の金時計は突き返された。 急転直下の出来事にスミスは憤懣やるかたなく、カルルクたちに事情を説明し心情を吐露する。しかし家長の権限の強い土地の文化・風習には抗えず、逆にアリやカルルクたちからも、親不孝をさせるのは却ってタラスが可哀想だと諭され、沈黙するしかなかった。スミスはタラスへの思いを断ち切るかのように、金時計を砂地に捨て、再び目的地へと向け旅立っていった。 双子姉妹のライラとレイリ ムナクの村の近くまで来た時、傷心のために寝付けなかったスミスは、寝不足のため乗っていたラクダから滑り、湖に転落してしまう。危うく溺れかけたところを、湖に漁に出ていた双子の姉妹・ライラとレイリに助けられたスミスは、道中の用心に医者を名乗っていたため、双子の家に案内される。 双子の祖父は軽い脱臼症状に悩んでいた。スミスは故国で父の手当てに慣れていたため、いとも簡単に治すが、それが近所の人々の間で名医との評判を呼ぶ。翌日、双子に叩き起こされたスミスは、医者を求めて近隣の人々が集まっている様子を見て仰天する。 結婚適齢期にあたっていたライラとレイリは、自分たちで理想の婿を探そうとして周囲を騒がせるが、紆余曲折の末、幼馴染のサーム、サーミ兄弟と結婚することとなった。 一方、アリに出立を急かされていたスミスだったが、医者としての自分を頼り、病を抱えながら遠くの村からも訪ねてくる人々を見て、この村を立ち去りかねていた。そこへ双子の結婚が決まり、スミスは結婚式への興味を口実に、式まで滞在を伸ばしたいとアリに頼み込む。披露宴でふるまわれる御馳走につられたアリは、喜んでそれを承諾した。 ライラとレイリは式の支度や披露宴でも騒動を繰り広げるが、どうにか周囲の人たちの祝福を受けて無事に嫁いでいった。彼女たちの結婚式を見届けたのち、人々の感謝の言葉と暖かい心に見送られて、スミスたちは村を後にした。 ハルガル一族の再襲撃 そのころ、ヌマジの牧草地を追い出され、一族の存亡の危機を迎えつつあったハルガルの長ベルクワトは、遠縁のバダン一族の協力を得て、エイホン家のある町を占領しようと画策、奇襲を仕掛ける。突然仕掛けられた戦争に、街の人々は必死で立ち向かう。カルルクとアミルもまた、エイホン家の一人として弓を放ち、剣を抜いて戦っていた。 ところが裏でロシアと通じていたバダンは、共闘すると騙してハルガルを街もろとも攻め落とし、支配するつもりだった。味方と信じたバダンの裏切り砲撃に遭ったハルガル一族はパニックに陥るが、事態を予測していたアゼルの指揮で脱出を試みる。 アゼルはバダンの族長を討ち取ったが、混乱の中で街の人々に敵として襲われ、捕えられて処刑寸前となる。しかし、街の人々を傷つけず、守ろうとした行動が認められ、土地の支配者の介入もあって命は救われた。 一方、からくも脱出に成功したベルクワトだったが、自分の過ちを認めず、全てを呪う言葉を吐き続けていたところを、追ってきたバルキルシュの弓により射殺された。 ペルシアの姉妹妻 ペルシアにやってきたスミス一行は、土地の富豪の客として歓待される。富豪の妻・アニスは、優しい夫と何不自由ない生活に恵まれながらも、友人と呼べる相手のいない寂しさを抱えていた。彼女の悩みを聞いたマーフは「姉妹妻」を持つことを勧め、相手探しに公衆浴場へでかけることを提案する。初めて訪れた公衆浴場で、アニスは遊び相手のペルシャ猫を連想させるような美女・シーリーンと出会う。 意気投合した二人は友人となり、アニスは思い切って姉妹妻の申し込みをする。シーリーンも喜んで承諾し、公衆浴場で知り合った仲間たちの取り持ちで、契りの儀式が行われるが、そこへシーリーンの夫が倒れたという凶報が飛び込んでくる。あわてて家にかけ戻るシーリーンだが、夫はそのまま帰らぬ人となってしまった。 シーリーンの婚家に残されたのは、まだ幼い息子と年老いた義父母。財産と呼べるものはほとんどなく、なけなしの結納金さえ葬儀代に消えてしまい、シーリーンは先行きの見えない不安を抱えて途方に暮れる。 アニスはようやく出来た親友の身の上を我がことのように案じ、彼女を救うため、夫の第二夫人として迎えることを思いつく。アニスはシーリーンを説得し、夫に事情を打ち明けて涙ながらに懇願する。夫はその言葉に驚きつつも理解を示し、喪が明け次第、シーリーンを第二夫人とし、その家族を引き取ると約束する。夫の優しさと愛情に、アニスは自分の幸せの大きさを知り、夫にあらためて感謝と尊敬の言葉を捧げた。 嫁入り前のパリヤ ハルガルたちの襲撃により家を失ったパリヤの一家は、再建までエイホン家に居候することになる。また、パリヤが嫁入りにと準備していた布なども襲撃で燃えてしまい、一から作り直すことになってしまった。 刺繍が得意ではないパリヤだったが、バルキルシュの「誰かを想って縫う」というアドバイスを受けて縁談相手・ウマルを思い浮かべながら縫ったところ、父母も思わず彼女を見直すほどの出来栄えとなる。 パリヤ自身はウマルのことを憎からず想っているのだが、ウマル本人の前では照れてしまい、ついつっけんどんな態度をとっては自己嫌悪に陥るのだった。これではいけないと考えたパリヤは、近所でも評判の女の子カモーラを見習おうとする。しかし、行く先々に現れては自分を睨み付けるパリヤの様子を、いぶかしく思ったカモーラが母親に相談したことから「パリヤがカモーラを妬んで冷たくしている」という噂がたってしまった。しかしこれをきっかけとしてパリヤとカモーラは友人となり、不器用なパリヤも社交的なカモーラを仲立ちとして、次第に周囲と打ち解けていく。 パリヤはカモーラに「うまく言おうとしなくていい」という助言をもらい、手作りのパンにこめた思いを伝えることで、ウマルに自分の素直な気持ちを話すことができた。ウマルも「君でよかったと思ってる」と答え、二人の仲は少しずつ前に進み始めた。 そんな折、パリヤはエイホン家からお使いを頼まれ、ウマルが馬車での送迎を申し出る。ところがその帰り道で思いがけない人助けをしたため、一泊することになってしまった。「結婚前の男女が連れ立って外泊する」という重大事件に慌てた両家の親は、互いに二人を正式な婚約者として認め合うことで体裁を取り繕い、結果的に二人の縁談が急速に進んだ。 パリヤはウマルに刺しゅうを施した帽子を贈り、二人は将来の夢を語り合って、親密さを増していく。 インターミッション 新たな旅 スミスとアリは、道中でさまざまなトラブルに見舞われつつも、無事アンカラに到着した。そこで待っていたスミスの友人、ホーキンズは、緊迫した情勢を挙げて帰国を薦めるが、スミスは、訪れた地の文化が戦災で失われる前に記録しておかなければいけない、として譲らなかった。 より正確で詳細な記録を残すべく、スミスは湿板写真機を手に入れ、新たな旅の準備を始める。そこへカラザの町で別れたはずのタラスが現れた。タラスは義父によって再婚したものの、新たな夫に事情を打ち明け、理解を得てスミスに会うべくアンカラまでやってきていたのだ。使用人としてでもそばに置いてほしいと懇願するタラスに、スミスは自分のほうこそお願いしたいと告げ、捨てた時計の変わりに印章に使う指輪 を贈り、あらためて求婚した。 ホーキンズの友人ニコロフスキは、彼への恩返しとして道中の案内と護衛を申し出る。タラスも同行を望み、大所帯となったスミス一行は、まずは地中海沿岸の町、アンタリヤを目指す。
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