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『八男って、それはないでしょう!』(はちなんってそれはないでしょう)は、 Y.Aによる日本のライトノベル。略称は「八男」。小説投稿サイト「小説家になろう」にて2013年6月から2017年3月まで連載され、完結後に外伝作品「八男って、それはないでしょう! みそっかす」を同サイトにて2017年3月より連載されている。書籍版はMFブックス(KADOKAWA)にて2014年4月から刊行されている。イラストは藤ちょこ。2020年5月時点でシリーズ累計部数は270万部を突破している。
メディアミックスとして、楠本弘樹によるコミカライズが『カドコミ』にて2015年4月から連載されている。2024年5月時点で電子版を含めたコミックス累計部数は339万部を突破している。テレビアニメ化もされ、2020年4月よりAT-Xほかにて放送された。
あらすじ
プロローグ
二流商社に勤める主人公・一宮信吾がある朝目覚めると、そこは異世界の貧乏貴族の家で、自分がその家の八男、ヴェンデリン・フォン・ベンノ・バウマイスター(5歳、愛称は「ヴェル」)になっていることに気付く。下級貴族とはいえ実家の困窮ぶりに「今から行動しなければ人生早々に詰む」と考えたヴェンデリン。書斎に置かれていた魔法球で自分に魔法の才能があることを発見した彼は、同じく書斎にあった教本を参考に自己流の修業を始めるものの、当の家族からも半ば放置されている環境だった。
ある日採取に入った森で「語り死人」となった魔法使いアルフレッド・レインフォード(愛称は「アル」)と出会う。アルが語り死人になったのは30年という短い生涯の中で身に着けた魔法と己の資産を託せる弟子を求めていたからだった。その日から2週間かけてアルから魔法の要訣を学んだヴェンデリンは最終日に教えられた聖魔法でアルを浄化する。
長男であるクルトの結婚と共に次男以下の兄4人は陪臣の家に婿入りするか領地を出て自活することとなり、五男のエーリッヒ含めた3人は家を出ていくがまだ幼いヴェンデリンは放任されつつも実家に残ることとなる。それから約6年の間にヴェンデリンは領内の未開地を駆けまわり、大雑把ながら地図を描いたり海や鉱山などで塩や貴金属を魔法で精製するなど実益を兼ねた修行を続ける。
冒険者予備校
12歳になったヴェンデリンは冒険者になるために、実家を出て隣のブライヒレーダー辺境伯領の領都・ブライヒブルクにある冒険者予備校に特待生として入学する。そこで友人、後には家臣、更に重臣となるエルヴィン、及び側室となるルイーゼ、イーナたちと出会う。
4人はバウマイスター家の寄親であり、ルイーゼとイーナの主君であるブライヒレーダー辺境伯主催の園遊会に出席する羽目となる。ヴェンデリンは将来の強力な後ろ盾となるブライヒレーダー辺境伯とアルフレッドの師匠である練達の魔法使いブランターク・リングスタットと知己となる。ヴェンデリンはアルフレッドの正式な相続人と認められ、一生遊んで暮らせる程の遺産と豪邸を受け継いだ。
竜殺しの英雄
王都で役人をしている兄エーリッヒの結婚式に出席するため、ヴェンデリンと友人達及びブランタークは魔導飛行船で王都に向かった。しかし飛行船は伝説級の古代竜、それも骨だけとなったアンデッドに追跡される。ヴェンデリンはブランタークの補佐を受けながら師匠譲りの聖魔法で古代竜を浄化し、活動停止させた。有り得ないデビュー戦であった。
ヴェンデリンの存在は直ちに国王以下中央の大物貴族たちに知れ渡り、あれよあれよと言う間に王城の謁見の間で独立した「準男爵」としての地位を与えられ、数百年振りという名誉ある双竜勲章を受勲した。回収した古代竜の素材は財務担当卿が出し渋る程の高額で買い取られた。そして既にヴェンデリンは「竜殺しの英雄」として王都で知らぬ者が無いほどの有名人となっていた。
「貴族当主」となったヴェンデリンは未成年にも拘わらず、長年王都開発のネックとなっていたパルケニア草原の主、老属性竜グレードグランド討伐の強制従軍命令を受ける。王宮筆頭魔導士クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング、ブランタークと共に、戦略級風魔法でグレードグランドを葬り去る。2度目の双竜勲章を受勲すると共に男爵に陞爵した。
教会からも注目されるヴェンデリンは聖教会本部から本洗礼を受ける事となる。洗礼を担当した教会の重鎮ホーエンハイム枢機卿からお茶に招かれ、彼の執務室で孫娘であるエリーゼを紹介される。抗う間もなくエリーゼを正妻とする婚約がととのってしまった。前世も小市民であったヴェンデリンには、この流れに歯向かう事など出来よう筈が無かった。
冒険者生活の始まり
15歳になり(この世界での)成人を迎えたヴェンデリン以下、エリーゼを交えた5人の冒険者生活が始まる。するとブランタークを通じて、普通なら新人パーティーには有り得ない危険な封印遺跡の王国強制探索依頼が届く。古代魔法文明時代における魔道具造りの第一人者イシュルバーク伯爵の手になる、その遺跡は数々の罠が張り巡らされた危険なものであったが、何度か死を覚悟しながらも辛うじて攻略に成功。伯爵の貴重な遺産の数々を発見した。
遺跡の発見により、ヴェンデリンたちは常軌を逸する程の多額な報酬を得た。後にエルヴィン、ルイーゼ、イーナはあまりの金額に惧れをなし、ブランタークの助言により殆どをヴェンデリンに押し付けた。これら過剰な富がヴェンデリンに集中しつつあるのは、中央の魑魅魍魎とも言える貴族たちの思惑があった。
閉塞しつつある王国の経済を、ヴェンデリンの実家の持つ広大な南部未開発地域をヴェンデリンに開発させて活性化させようという目論見である。こうして気ままに冒険者として生きていきたいというヴェンデリンの望みにも拘らず、否応なしに実家をも巻き込んだ貴族たちの思惑の渦中に飲み込まれて行く。
テレビアニメ
2020年4月から6月までAT-Xほかにて放送された。2020年8月26日に全12話を収録したBlu-ray BOXが発売された。
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